海外への挑戦を決心したら、日本を去る前にできることはなるべくやっておきましょう。
今回は、最初のドイツ留学から帰国後に、私がオランダに発つまでの4年間で行った“準備”について記していこうと思います。
目次
モヤモヤの解明
準備編
1. 貯金
2. 未経験の処置を進んでやる
3. 留学先とのコンタクト
4. 退路を断つ
5. 蕎麦打ち修行
6. 覚悟
モヤモヤの解明
2012年2月中旬に私は1年半のドイツ留学を終え帰国しました。
留学中に感じ始めたそこはかとないモヤモヤ感が具体化するのには時間はかかりませんでした。
留学経験を講演という形や歯科雑誌の記事などで還元するほかに、日々の臨床にも少なからず生かしてはきましたが、心の底から自分が納得できることができていませんでした。
そしてある日、「もう一度海外に戻って、自分の手で海外の患者さんも診療できるようになろう!」
そう決心するに至りました。
目標と覚悟が決まればこっちのものです。あとはそれに向けてひたすら行動するのみです。
それでは、私が2度目の海外挑戦に出発するまでの4年間に”準備”として取り組んだことを記します。
1. 貯金
先ずは海外に挑むための資金を貯めましょう。
私のような臨床家が海外留学(臨床留学)をする場合、ほとんどが自費留学になると思います。
いわば武者修行なので、言い方を変えれば己が好んで己のために行くわけです。従って、基本的には誰もお給料を払ってくれません。
また私のように、海外で最終的に医療者として働きたいと思っていても、それが実現するまではお給料はないわけです。そしていつ実現するのかも不透明です。
当面の間生活していける最低限の資金がどうしても必要になります。
具体的にどのくらいあればいいのかは人ぞれぞれですが、その辺の詳細はまた別の記事で書きます。
とにかく、最低限自分が目標とする年数を無給で生き延びるだけの資金は欲しいところです。勿論多いに越したことはないわけですが。
ということで私は、ひたすら貯めました。ありがたい事に、この当時勤めていた病院には官舎がありました。普通のアパートを借りるより格段に安く借りることができます。
エレベータはなく、冬は寒く、安いなりの質感ではありますが、十分に住めますし、何より家賃を節約できることがありがたかったです。この時はQOLより安さが優先でした。4年間ずっとこの官舎にお世話になりました。
お給料もとにかく貯金に回しました。
ざっくりですが、海外で月に20万円で生活(家賃、食費、光熱費、通信費、勉強費用など全て)すると仮定して、年間240万円。
それを想定年数分は貯めるぞ!という気合で貯めました。
2. 臨床経験をできるだけ増やす
留学先で技術を学びたいとか、日本ではあまり見ない手術を学びたいなど、臨床技術の向上という目的があるわけです。
その際に、自分の経験値が高い方が、その技術の何が良いのか、どこかが新しいのか、はたまたこれに関しては日本のやり方の方が良いとか、自分ならこうするとか、自分は今までこうしてきたけどここは真似するともっと良くなるなど、見えてくるものが多くなります。
目の前にある貴重な情報をなるべく多く吸収するためには、経験値を高めておく方が得策です。
なので、その点においてだけは、留学のタイミングを少し待つ、遅らせるという選択肢があっても良いかもしれません。
経験値が低いままだと、猫に小判になりかねません。
とはいえ、全てを網羅することはできません。過度に自分を追い詰める必要はありません。
なるべく多くの症例に触れようという心構えで、日々の臨床に臨めば良いと思います。
私も、進んで新しい処置や手技に挑戦したり、時には他科の手術も見学させてもらったりもしました。
そのような日々の小さな積み重ねが、小さなに自信へと繋がっていくと思います。
3. 留学先とのコンタクト
自分を受け入れてくれる留学先とのコンタクトも定期的に取りづつけると良いと思います。
最初は受け入れオーケーとなっても、数年経ったら受け入れ先の人事や状況が変わっていてやっぱり無理。なんてことも起こらないとは言い切れません。常に受け入れ先の状況確認と、自分の情熱を示し続けるという意味で連絡は定期的に取っておくことをお勧めします。
私は2、3ヶ月に1回はメールを送るなりして、自分の近況を伝えながら、相手先の門戸が空いていることを確認し続けました。
また、学会などで直接会える機会がある時は進んで参加するようにもしました。ドイツ留学中に知り合った日本の先生が私のビジョンを知っていてくださり、そのような機会があると積極的に声をかけてくださったことが大きな助けになりました。
一回のOKという返事に安心しきらず、適度にコンタクトを取り続けましょう。
4. 退路を断つ
私の場合は、2度目の海外挑戦は海外で医療者として働くというものでした。
つまり、働けるまでは帰ってこない!
さらに言えば、働けるようになったとしたらしばらく(もしくはずっと)海外で働くことになる可能性もあります。
ということで、一切の甘えを捨てる想いで退路を断ちました。
“留学”の場合はそこまでしなくても良いと思います。
“一時的な留学”の場合は、通常日本での所属先に戻ることが一般的だと思います。
私も1回目のドイツ留学の際は、留学期間が終われば、所属先の慶應病院か出向先の病院に戻れることにはなっていました。
今回のオランダへの挑戦はそういうわけにはいきません。
帰る宛がない状況にしてでもいく覚悟が必要でした。
それくらいしないと実現できない目標だと思いました。
甘えたくても甘えられない状況でこそ、火事場のくそ力が出せる!いや出てくれ!という自分への期待も込めていたのかもしれません。
精神的な重圧は想像以上でしたが、この決断が功を奏し今があります。
5. 蕎麦打ち修行
これは番外編的なことなので、読み飛ばしていただいても構いません。
通常は必要ないでしょう。笑
ただ、蕎麦に限らず何かしらの一芸があることは海外でも強い武器になることは間違いありません。
私は蕎麦打ちができるということがきっかけで、コミュニーケーションの糸口を作ったり、興味を持ってもらったりと、実際にその恩恵を感じています。
なぜ蕎麦かというと、私が無類の蕎麦好きだからです。私のブログでも、日本にいた頃の蕎麦備忘録の記事が結構見つかると思います。ある時からは、毎週末必ず蕎麦を食べに行っていました。
しかし、オランダでは当然ながら手打ち蕎麦は食べられません。(乾麺は売っていますが)
オランダにいく決心はしましたが、蕎麦が食べられなくなることはとても嫌でした。
そこで、「蕎麦屋がなくて蕎麦が食べられないなら、自分で打てるようになれば良い!
ないものは自分で作り出そう!」ということで蕎麦打ち修行をしました。
職場を退職してからオランダに発つまでの3ヶ月間、毎週2、3回は懇意にして頂いていたお蕎麦屋のお父さんに蕎麦打ちを習いました。
とても楽しかったです。今でもオランダで蕎麦打ちは時々しています。
オランダ人に振る舞ったこともあります。
蕎麦打ちの行程を見せると、思いのほか大変でかつ繊細な作業なんだね!?と驚かれます。
何かしら話題になるような芸を身につけていくと、思いがけない時に助けになるものです。
芸は身を助くは留学にも当てはまると思います。
6. 覚悟
何事においても準備は大切なことです。
と同時にタイミングが大事なこともあります。
準備を万端にすることに専念しすぎてはタイミングを逸することになるし、準備が整うのを待っていたのではいつまでもスタートが切れない。というジレンマも起こり得ます。
なので準備もほどほど、そこそこくらいに考えていても良いのではと思います。
資金も経験も語学力も多いに越したことはありません。
でもこれなら万全、という明確なラインは存在しないと思っています。
そういう意味では、どんな状況でもスタートを切れる覚悟を決めることが最大の準備と言えるかもしれません。
そしてその覚悟は、やがて大いなる武器となることは間違い無いでしょう。
海外で医療者として働くための道!シリーズの記事はこちらから↓
http://www.chiptankoyama.com/category/海外で歯科医師として働く/