オランダで歯科医師免許を取得するためのステップ(後編)・海外で医療者への道!Vol.8

海外で歯科医師として働く



前回に引き続き、オランダでの歯科医師免許取得ステップの解説(後編)です。

おさらいとして、簡単に全体的な流れを記すと以下の4ステップになります。

 ・受験資格の取得
・オランダ語の知識および能力検定試験(AKV-toets)
・医療者としての専門能力試験(BI-toets)
・医療者としての登録申請(BIG-register)
 →申請後仮登録され、仮登録期間中に3ヶ月の歯科クリニックでの研修を行う。
 →研修ののちに本登録がなされ、オランダ国に歯科医師として登録される。


目次
1. オランダ語の知識および能力検定試験(AKV-toets)
 1-1  AKV-toetsの内容
 1-2 AKV-toetsに必要な語学力と知識

2. 医療者としての専門能力試験(BI-toets)
 2-1 BI-toets(専門能力試験)の内容

3. 医療者としての登録申請(BIG-register)

※本記事は2022年3月14日現在の情報及び、筆者自身の経験を元に書かれています。
実際に申請、受験をされる場合には、各自で最新の情報を確認してください。


1. オランダ語の知識および能力検定試験(AKV-toets)


医療者としての資格が欲しい場合、AKV-toets(Algemene Kennis- en Vaardighedentoets/一般的知識および技能検定試験)を受験しなくてはなりません。

この試験は、BIGーregisterへの登録が必要な、薬剤師、医師、理学療法士、健康心理学者、医師助手、セラピスト、歯科医師、看護師、助産師の、全ての職種で行われます。

医師、歯科医師、看護師においては、AKV-toetsの後にBI-toets(専門技能試験)を受験しなくてはなりません。

試験の枠には限りがあり、試験日が満員になり次第、新しい日程が更新されるシステムです。従って、なるべく希望の日にちで受験をするには、babelのサイトを日頃注意してみておく必要があります。

1-1 AKV-toetsの内容


このAKV-toetsにおいてオランダ語の熟達度は重要な部分です。英語の読解力、コミュニケーション技術、そしてオランダの医療に関する知識も試験の要素です。

試験は4つのパートに分かれています。

①要約とプレゼンテーション
②問診とレポート
③英語の読解能力
④オランダの医療(法律)の知識

です。


①要約とプレゼンテーション
これは、歯科に関する記事を読み、それを要約したスライドを作成し、試験官の前でプレゼンを行う試験です。

②問診とレポート
これは、模擬患者を相手に問診を行います。問診の後に、その患者に関するレポートを作成する試験です。レポートには、現病歴、既往歴、診断、治療方針、指導内容などをまとめます。

③英語の読解能力
いくつかの短い、英語の記事を読み、それぞれに与えられた設問に答える試験です。

④オランダの医療(法律)の知識
オランダの医療及び、法律についての試験です。
この試験はVolksgezondheid en gezondheidszorg,8e druk.​Bohn Stafleu Van Loghum, 2016. ISBN-13: 9789036813198という本から出題されます。

より詳しい情報は語学機関babelのサイトを参照して下さい:https://www.babel.nl/cursusoverzicht/medisch-assessment-akv-toets/

AKV-toetsに関する詳しい説明→https://www.babel.nl/wp-content/uploads/2020/11/Algemene-Informatie-AKV-Toets-2020-11-17.pdf

1-2 AKV-toetsに必要な語学力と知識


・オランダ語熟達度: B2/C1

・英語熟達度: B2/C1 (IELTS6.5/TOEFL600)

・オランダの医療に関する機関、法律、倫理、文化の知識

語学レベルはCEF(Common European Framework of Reference for Languages)によってクラス分けされているものです。A0、A1、A2、B1、B2、C1、C2とあり、A0がビギナーでC2が最上級です。

オランダ語検定試験(NT2)や、英語検定試験(IELTS、TOEFL、またはケンブリッジ)の合格証明は、AKVテストを受ける上で必須のものではありません。

あくまで、AKVをパスするのに必要とされるレベルということです。しかし、IELTS、TOEFL、またはケンブリッジの合格証明書を取得しているの場合は、AKVテストの英語パートの​​受験が免除されるうるとのことです。


2. 医療者としての専門能力試験(BI-toets)


医師、歯科医師、看護師の免許を 取得したい場合は、AKV-toetsの後にBI-toetsを受験しなくてはなりません。
この試験は、各業種に特化した専門的な知識を問う試験です。日本で言うところの国家試験に該当するものです。

BI-toets(専門能力試験)は年に2回、ACTA(het Academisch Centrum Tandheelkunde Amsterdam)によって行われます。

試験は年2回行われますが、どちらか1回しか受験できません。また、AKVーtoetsをパスしてから1年以内に受験しなくてなりません。

詳しくは下記サイトを参照:

・医師 https://www.bigregister.nl/buitenlands-diploma/documenten/publicaties/2017/03/03/assessment-arts

・歯科医師 https://www.bigregister.nl/buitenlands-diploma/documenten/publicaties/2017/03/03/assessment-tandarts

 2-1 BI-toets(専門能力試験)の内容


BI-toetsは以下の4部門からなります。

1)セオリー:
医学基礎知識、放射線科学、歯学1、歯学2

2)臨床前試験(実技):
歯牙清掃(SC、RP)、歯牙切削(窩洞形成/う蝕処置)、3歯ブリッジの形成、2根管の根管治療

3)問診:
指定された患者の問診(模擬患者)

4)診断、説明、治療方針の立案:
臨床ケース試験は、総合的な歯科知識、分析能力、解決能力を評価する試験です。受験者はいずれかの治療に関する2人分の患者の臨床ケースに答える必要があります。



2022年3月14日現在でもサイト上には上記のように記載されています。
が、試験内容は微妙に変わる可能性もあると思います。

というのも、私が受験した時はコロナ禍ということもあり、
1セオリー、3問診、4診断、説明、治療立案の試験はオンラインで行われました。
2の臨床前試験(実技)は、ACTA(het Academisch Centrum Tandheelkunde Amsterdam)で行われます。

Simodontという3Dで再現された歯牙をバーチャルで切削するシュミレーターを使って行われます。

歯牙清掃(SC、RP)は頭蓋マネキンを使用します。

その際に、コロナの状況を考慮し、人と人の接触時間をなるべく減らすために、試験内容も若干減らされました。


セオリー試験の詳しい内容

・パート1:一般的疾患、薬理学/薬物療法学、麻酔/麻酔科、生理学、病態生理学、微生物学、免疫学、口腔細胞生物学、生化学

・パート2:カリオロジー(保存学)、歯内療法、小児歯科、歯周病学、社会歯科学、倫理学、唾液学

・パート3::義歯、クラウン、ブリッジ、インプラント、口腔運動学、歯科材料学、矯正学、口腔疾患、口腔外科、口腔病理、腫瘍学

・パート4:画像診断、画像撮影技術、読影、放射線の安全性、統計、方法学、エビデンスに基づく問題解決



3. 医療者としての登録申請(BIG-register)


全ての試験に合格すると、晴れて歯科医師として登録される、、、

というわけではまだありません。

今度は登録申請を行う必要があります。

その際に、いくつかの書類を提出しなくてはなりません。

基本的に以下の書類の提出が求められます。

・CV(履歴書)
・居住経験のある国での無犯罪証明書
・居住経験のある国での医療者として登録されている/登録されていた証明(歯科医師免許)


私の場合、ここで一つ落とし穴がありました。

CV(履歴書)は問題ないとして、日本の無犯罪証明書と歯科医師免許は当然準備しました。日本で歯科医師免許を取得したので、そこは当たり前です。

ところが、それだけでは十分ではありませんでした。


私は10年ほど前にドイツに臨床留学に行っています。ドイツに1年半住んでいました。

当時、ドイツには自費留学で、オペの見学を目的に滞在していました。

上記の「居住経験のある国」とは、3ヶ月以上滞在した国全てが対象になるということでした。

従って、私の場合はドイツからの無犯罪証明書と、ドイツに医療者として登録されている/登録されていた証明が」必要だということになります。

ドイツでは診療行為はしていないので、歯科医師としては登録されていないのですが、その場合は、「歯科医師として登録されていない」という証明書を提出する必要があるとのことでした。

もう、決まりなので書類を準備するしかありません。色々調べて、なんとか書類の入手方法がわかりました。

そして、2022年3月14日今現在、ドイツからの書類を手に入れる作業の真っ只中です。


全ての書類が揃って初めて登録作業が開始され、まずは仮登録がなされます。

そこでようやく3ヶ月間の歯科クリニックでの研修期間を始められことになります。

3ヶ月の研修が終了すれば、独立して診療を行える歯科医師として、オランダに登録されます。


歩は、想定よりややゆっくりですが、一歩一歩前進するしかないですね。



前編Vol.7はこちら↓


海外で医療者として働くための道!シリーズの記事はこちらから↓
http://www.chiptankoyama.com/category/海外で歯科医師として働く/

↑私がイラストを担当した抜歯本です。イラストが豊富でわかりやすい内容になっています。