医療用のイラスト1枚や似顔絵1人分に1万円は高いのでしょうか?
イラストの値段について自分なりの解釈をまとめてみました。
⒈ イラストの値段 |
世の中のイラストの値段はピンキリです。
有名なイラストレーターや漫画家が描けば、1枚につき数十万円なんてこともあります。
一方で無名な(そんなに有名ではない)イラストレーターが描けば数千円、ひどい場合には数百円なんてこともあります。
こういった “差” が生まれることは必然だと思いますが、全般的にイラストに対する対価が軽視されている傾向を感じざるをえません。
当然、有名な描き手に描いてもらうには数十万という費用を払わなければならないことは理解できます。この場合には、イラストに対する対価と同時に、”その有名な描き手が描いた作品である” という付加価値がつくからです。いわゆるブランド品です。
ところが、無名なしはそこまで有名でないイラストレーターが描く場合には、シビアな値段設定がされていることも多々見かけます。
黙っていても依頼が入るなら良いですが、そうもいかない方が多いと思います。自分もその1人ですが。
巷で見かけるクラウドソーシングでのイラストの受注ではかなり安い値段設定を見かけます。クラウドソーシングにはクラウドソーシングなりのメリットはあると感じますが、イラストレーター側の努力が値段に適正には反映されないことも多々あると考えています。
また、コンペ形式のイラストの仕事は、場合によってはさらなる悲劇を見ます。なぜなら、コンペに落ちればいくら頑張って良い絵を描いても一円にもならないからです。
もちろん、絵を描くのが楽しくてただ描ければ良いという場合には構わないと思いますが、仕事としてイラストを描く場合には、その作品が出来上がる過程もしっかりと値段に反映されるべきだと思います。
⒉ 僕の場合の値段設定 |
僕の場合は、時給と作業時間で値段を設定しています。
時給 × 作業時間 = イラストの価格
となります。
時給を決めるにあたっては、
・デザイン料(デザイン考案)
・技術料
・機材料
・最低賃金
を加味しています。結果、現状では時給2000円に設定しています。
・デザイン料(デザイン考案)
医療用シェーマの場合、参考となる画像をいただいても、そのままは使いません。それでは自分に依頼してくれた意味がありません。毎回、よりわかりやすい角度や構図、表現方法はないかと考えて描いています。
似顔絵においても、
・ポーズ
・服装
・背景(背景ありの場合)
・テキスト(文字)のフォントや位置、色、大きさ
などを考える必要があります。使い回しはせず、毎回ゼロから作り上げています。
・技術料
医療用イラストや似顔絵のみならず、絵を描くことはある種の特殊技術であると考えています。たとえ人並み外れたセンスがあったとしても、練習(絵を描く時間)なくしては上手くはなりません。
クオリティを上げるために、絵を描くことに多大な時間を費やしているはずです。
単純に1枚の作品を仕上げるのにも、あたり、下書き、ペン入れ(清書)、色ぬり、影入れ、ハイライト、文字入れ と多数の工程があります。
また、ソフトを使用してイラストを描くにも、どのペンを使用すればどう塗れるとか、雲を描くにはどの筆を使うとか、不透明度を何%にするか、レイヤーをどう扱うかなどなど、ソフトの機能と実際に描写される結果の関係を知らなくてはより良い絵は描けません。そのためには、本やネット勉強しますし、実際に描いて経験として自分に蓄積させる必要があります。
そうした努力と研鑽が作品の裏にあるはずなのです。
・機材料
アナログで絵を描くにも、デジタルで絵を描くにも、機材が必要です。
アナログなら絵の具やキャンバス。どれも消耗品ですから、ランニングコストもかかります。
デジタルならパソコン、ペンタブレット、液晶タブレット、ペイントソフトもしくはドローイングソフトなどが必要になります。これらも場合によっては修理、買い替え、アップデートが必要な場合もあります。
・最低賃金
参考までに、平成28年度の厚生労働相発表の最低賃金は714円〜932円/時間となっています。
(都道府県によって違いあり)
これらに作業時間を掛け合わせて料金設定を行っています。
かんが良い人なら気づくかもしれませんが、作業時間によって値段が変わるのに、すでに料金が設定されているのはどういうことか?
もちろん、一つ一つの作品によって作業時間は変わります。しかし、最低限必要な作業時間というものはそうそう変わりません。
なので、時給に最低限必要な作業時間を考慮して値段設定を行っています。
この最低限必要な作業時間というのは、自分の作品のクオリティを満足行くレベルに保つために必要な時間とも言えます。
したがって、質を落としてもいいから半額にしてほしいと言われてもできません。お金を頂いて、自分が描く以上は、少なくとも自分に恥ずかしくない作品を提供したいからです。
例えば、似顔絵(全身)の単価は12000円です。
この内訳は
・あたり・下書き:2時間
・ペン入れ:1時間
・色ぬり:3時間
2000円×6時間=12000円
です。
最低でも6時間は作業時間が必要です。実際にはもっとかかることがほとんどです。
⒊ まとめ |
医療用イラスト1枚に、もしくは似顔絵1枚に1万円は高いのか?
最終的には依頼者が判断することです。
イラストレーター(僕)の立場から見れば、正当な価格です。
絵を見る人が変われば、評価も変わります。依頼者側の好みも大いに関係することです。
あなたの作品クオリティでその値段は高い!と言われればそうとも言えるし
このクオリティなら妥当だと思っていただければそれで良いわけだし。
あなたの絵のスタイルが好きだと思っていただければ、値段に関係なく注文が頂けるかもしれません。
まぁ、イラストを仕事として成立させるには注文が入らなければ始まりません。
しかし、注文しやすいように値段を安く設定すれば、クオリティが落ち可能性が出てきます。メンタル的な要因もありますし、注文が殺到すればそもそも時間をかけている場合ではないからです。
作品のクオリティにこだわるなら、ある程度値段が上がることは必然と考えています。
そうすることによって、注文の殺到という事態も防げます。注文を頂いても対応できなければ意味がありません。じっくりなとくの行くクオリティに仕上げるための時間を確保できる注文の量でなくてはいけません。
少なくとも自分の場合は、依頼者さんの期待を上回れるようにと思いながら、毎作品に挑んでいます。
【今日のオランダ語】
君の絵は高いと思うよ。 マジで!?
Ik denk dat jouw tekening duur is. Echt!?
(イック デンク ダットゥ ヤウ テーケニング デュール イス)