江戸蕎麦の暖簾御三家と言えば、薮、更科、砂場である。
その薮系において、現存する老舗はかんだやぶそば、並木藪蕎麦、池の端藪蕎麦である。
いわゆる藪蕎麦御三家だ。
その現在の本家かんだやぶそばに行ってきた。
(上野藪蕎麦は本家のかんだやぶそばから暖簾分けされた名店だが、血縁関係でないため、御三家という表現には入らないようだ。)
以前、上の藪蕎麦に行った記事はこちら。
検索 上野・藪で王道の蕎麦を食す。
⒈ 店舗情報
場所:東京都千代田区神田淡路町2-10
営業時間:11:30~ラストオーダー20:00
定休日:毎週水曜日
薮系の歴史は非常に長いので、ここではサラッと紹介しよう。
もともと駒込千駄木町の団子坂藪下にあった蔦屋も藪蕎麦と呼ばれて大いに繁盛していた。
その蔦屋が神田淡路町に出していた支店を、明治十三年(1880)に砂場系の浅草中砂四代目 堀田七兵衛が譲り受けた。
七兵衛は団子坂の本店が明治三十九年(1906)に廃業したあと、藪の暖簾をあずかり、名実ともに藪の本家として現在に至っている。
参考:蕎麦事典
今年で創業135年を迎える。
2013年2月に不慮の火災で木造の歴史的な建物を失った。
店舗を新生し2014年10月に再開を果たし、今なおその集客力は衰えを知らないようだ。
旧店舗は訪問したことないが、写真を見るとガラリとその雰囲気を変えている。
店構えは老舗の風情を出しつつも一新されており、新たな歴史の始まりを感じる。
以前あった、木の塀は取り払われ、豊かな緑が見やすくなったいる。
入り口の場所も変わったようだ。
以前の入り口の上に吊るされていた金灯ろうは、今も同じ場所に吊るされている。
また、入り口の木製の看板もそのまま使用されていた。
以前は店内にあった、堀田七兵衛の銅像が店の外の中庭に置かれている。
訪問時は、小雨の降る13時頃。
正確には分からないが、おそらく10組くらいが既に列を作っていた。
店内は席数が多いため、そこそこ回転も良く20分程で店内に入れた。
店は二階建て。
二階は個室のみで、予約でのコース料理が頂けるようだ。
我々は店奥のカウンター席に着席。
テーブル席多数、お座敷席も当然ある。
店内奥の厨房の入り口に、番台には店主と女将だろうか、男女が対に座っていた。
店主は会計を、女将は注文を厨房に伝えるはな番を担っている。
その通し言葉の言い方がまた独特で気持ちがよい。
135年の歴史の中で、大型店でありながらその質と雰囲気、オーラを保ち続けてきただけの事はある。
⒉ メニュー
メニューはこんな感じです。
⒊ 実食
私は
せいろうそば ×2枚
天たね
嫁殿は
鴨南蛮そば
を注文した。
運ばれてきた蕎麦は、蕎麦の若芽を練り込んだとされる薄緑色をしていて美しい。
機械打ちだと思うが、角は少々丸みをおびている。
蕎麦だけを頂く。
蕎麦の風味がフワァーっと花に抜ける。
優しいながらもしっかり風味があって、流石の一言。
コシは程よい。
いわゆる機械打ちの特徴でもある、のっぺりとした感じがある。
手打ちならではのコシはないが、これはこれで非常に旨い蕎麦だ。
秘伝のかえしは火事で焼失したと聞く。
以前の味を知らないので、私には比較はできないが、現在のそば汁は辛口江戸前だ。
蕎麦が優しいだけに、ほんとに少量つければ充分。
また、少々蕎麦が長めに打たれているため、どっぷり浸かっていしまいがちなので注意が必要だ。
天たねは、芝海老のかき揚げである。
胡麻油で揚げられており、その香りだけでも旨い。
かき揚げの上には雪の様に細かい天かすが散っており、崩すのが勿体ないくらいだ。
外はカリッカリに揚がっていて、中はまさしくホクホク。
天たねを頬張り、その残り香のあるうちに蕎麦だけをすするとこれまた旨い。
鴨南蛮は油は少なめであり、あっさりとした上品な仕上がりだ。
しかし、汁の出汁がシュワァーっと胃に染み渡り、とても美味しかった。
遂に訪問できた藪蕎麦の本家。
想像以上に、その歴史の分厚さを感じられる時間であった。
蕎麦が旨いとか、それだけでは評価できない様な、ここでしか出せない空間がそこにはある。
薮の御三家である、並木藪蕎麦、池の端藪蕎麦もいずれ行きたい。
以前、池の端藪蕎麦に足を運んだ際は休業になっていた。
その時に上野藪蕎麦には足を運んだ。
そのときの記事はこちら。
上野・藪で王道の蕎麦を食す。
藪蕎麦系の親玉は今回訪問できたが、その懐のでかさに感動した想いです。