オランダでオランダ人が口腔外科医になるには実際どのくらいの年数がかかるのでしょうか?
ダブルライセンスと聞くと長い道のりのように感じますよね。
実際はどうなのでしょう?
⒈ ダブルライセンス |
オランダで口腔外科医になるには医師(メディカル)と歯科医師(デンタル)の両方のライセンスが必要になります。
オランダ以外にも中央ヨーロッパ諸国では、このダブルライセンスが義務付けられています。
なぜこのような違いが生まれるのでしょう?
これは日本で言うところの「口腔外科」がオランダや中央ヨーロッパ諸国では「頭蓋顎顔面(口腔)外科」とか「口腔顎顔面外科」と表現されていることにも違いの糸口がありそうです。
日本をはじめ、アジア、アフリカ、オセアニア、アメリカでは外科矯正や口蓋裂、外傷、口腔内手術に焦点を当ててきた傾向が強いようです。
したがって、口腔外科領域の治療が歯学側から派生しているという根底があります。
(もちろん日本でも癌治療やインプラントも行われています。)
一方ヨーロッパ諸国では、癌やその再建、頭蓋や頭蓋底、顔面そしてインプラント治療が早い段階から含められていました。
つまりヨーロッパでは、どちらかというと口腔外科医としての教育というよりは頭蓋顎顔面口腔外科医としての教育が主導だったわけです。
すると必然的に歯学的側面からではなく医学的側面からの訓練が要求されたのでしょう。
とはいえ、ヨーロッパでも統一はされていません。
フランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、オーストリアと言った地中海諸国では、医学的側面から。
オランダ、英国、アイルランド、ベルギーおよび一部の東部諸国を含む中央ヨーロッパ諸国では医学的と歯学的両側面から。
スウェーデン、アイスランド、デンマークというスカンジナビア諸国では歯学的側面から。
というように傾向が分かれています。
ヨーロッパでOMF (Oral & Maxillofacial) surgeonにダブルライセンスが求められるのは、オランダ、ドイツ、ベルギー、スイス、スペイン、オーストリア、ハンガリー、フィンランド、ギリシャ、イギリスです。
医師免許が求められるのはフランス。
医師免許か歯科医師免許どちらかがあれば良いのがイタリア、ポルトガル。
歯科医師免許が求められるのはデンマークとスウェーデン。
となっています。
(自己調べ。違っていればご指摘ください。)
もちろん医学の発展において、最初に誕生した口腔顎顔面外科医は医師であったこともありますし、そもそも、歯学というものが医学より後に体系化されてきた背景も関与していると思います。
私的な考えでは、やはり歯学的側面の重要性は高くどう考えても無視できません。
どちらかのライセンスがあれば良いのであれば、主導は歯学だと捉えています。
(自分がそういう教育を受けてきたからかもしれませんが。)
もちろん欲を言えば、どちらもあるに越したことはありません。
(必要か否かの議論はここではしておりません。)
しかし、そこには教育機関の長期化という問題が見え隠れします。
日本でダブルライセンスを取るとなれば、現実的には15、6年はかかるのではないでしょうか。
学生期間だけで単純に6年×2ですし、さらに各ライセンスでの必須研修期間もあります。受験勉強期間も考えれば、どちらかに編入で入れたとしても、やはり15年くらいでしょう。
では、ダブルライセンスが義務付けられているオランダはどうでしょう。
⒉ オランダで口腔顎顔面外科医にかかる年数 |
今いる講座の医局員の話を聞くとおおよその道のりは皆共通しています。
流れとしては、
・医師免許取得(6年)
↓
・歯科医師免許取得(4年)
↓
・臨床トレーニング(4年)
↓
・晴れて口腔顎顔面外科医として国から認定される
となっています。
たいていの場合は医学部を卒業してから歯学部を短期コースで終える場合が多いようですが、その逆パターンも存在しているのが実際です。
またさらに、腫瘍専門医になるにはプラス2年の専門的トレーニングを受ける必要があります。
ダブルライセンスが良いか悪いか、必要か不必要か、意味があるかないかはここでは置いておきます。
その上で、ダブルライセンスは一見長くて険しい道のりのように思えますが、医局員たちは皆一様に確実にステップアップしていきます。
誰かが突出し、誰かが取り残されるということが起こりません。
個人の能力さはあれ、経験値の差が大幅には生まれないようになっている印象があります。
実にしっかりと叩き上げられていきます。
これは一重に、しっかりと体系化された臨床教育(トレーニング)システムに裏打ちされているお陰、だと強く感じます。
世界共通の資格、教育システムが生まれる時代が来たら面白とも思う今日この頃です。
【今日のオランダ語】
オランダの教育はここ10年で大きく変化しました。
Het onderwijs in Nederland is de laatste tien jaar erg veranderd.
(ヘット オンダーヴェイス イン ネーデルランド イス ドゥ ラーツテ ティン ヤール エルフ フェラァンデルトゥ)